空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例について
2016年4月から、相続した空き家を売却した場合にも、一定の条件を満たすと、譲渡所得の「3,000万円の特別控除」が適用されるようになりました。
これは現場レベルでは、かなり大きい特例です。
ですが、まだ出来たばかりの特例ですし
不動産業者によっては、この特例をしらない業者さんが多いと思います。
私にご相談にきたお客様も早速この特例が当てはまるお客様がおりましたので、内容的にも今後どんどん出てくる可能性があります
私にご相談いただいたお客様ですが、今までであれば、今ある築古の建物は壊さず貸して、収益を得た方がいいと私はアドバイスしたと思いますが、この
「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」があるので壊して売った方がいいとアドバイスしました。
2016年3月9日「所有者がわかっている建物を、区が解体へ全国初」
と今まで3回コラムを書いてきましたが、国が空き家問題に対してどのように対策をしていこうか
今までも対策を練られてきましたがその次の一手ということだと思います。
ポイントは3つ
空家に係る譲渡所得の特別控除の特例
3000万円の特別控除の特例が適用される条件
最大で600万円の節税
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
2016年度(平成28年度)税制改正大綱で、相続した空き家を売却した場合の所得税の軽減措置が新しく創設されました。「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」と呼ばれます。
従来の「譲渡所得の3,000万円の特別控除」は、所有者自身が生活の拠点として利用していた家屋の売却が前提でした。
2016年4月からは、相続した空き家を売却する場合でも、3,000万円の特別控除の特例が適用されることになります。
ただし、この特例を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
細かい条件がありますが、簡単にいえば、相続した旧耐震基準の家屋を、耐震改修して売却するか、解体し更地にして売却する場合に、譲渡所得の3,000万円の特別控除の特例が適用されるというものです。
もう一つ居住に関する規定もありますので、そこは専門家にきちっと確認しましょう。
つまり「危険な空き家を減らすことに貢献すれば、減税しましょう」というものです。
耐震改修して売る? 更地にして売る?
この「特別控除の特例」の対象となる旧耐震基準の家屋というのは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋です。
およそ築35年以上の古い家ということになりますから、立地が良いとか、古民家や特別の価値のある建物でなければ、耐震リフォームにコストをかけても売れる保証はありません。
ですから、わざわざ耐震リフォームして売るというケースは稀で、多くは家屋を取り壊して、更地で売却することになるでしょう。
なぜこの特例が重要なのかというと、後で説明しますが、現場では35年以上たっている建物を相続で取得した息子さん娘さんなのですが、
亡くなったお父さんが取得した時の契約書がなかったり、あってもすごく安く取得していることが多く、
結局不動産の取得費を5%で計算しなければならなくなり、残り95%に、不動産譲渡税20%かけて税金を払わなければならないという状態だからです
国の「空き家対策」の一環
2015年5月に「空き家対策特別措置法」が施工され、国や地方自治体の空き家対策が本格化しました。
それにともない、これまで空き家を増やす要因となってきた固定資産税の住宅用地特例の見直しが行われ、危険な空き家を放置しておくと、固定資産税が6倍にも跳ね上がる仕組みになっています。
固定資産税の住宅用地特例を「ムチ」とすれば、今回の減税措置は「アメ」と言えるでしょう。国は、アメとムチの両方を使って、空き家を減らす方向へ本格的に動き出したと言えます。
私も以前からブログで書いているように、人口減少期に入った日本で空き家問題は大変な問題です。それを解決するためにこの 「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」は
本当にインパクトが大きいです。
空き家の解体やリフォームに補助金を利用できる場合も
空き家の解体や耐震リフォームに、国や自治体の補助金を利用できる場合があります。
お住いの自治体で、空き家の解体に補助金を出す制度があれば、国の助成金などを使って解体費用を一部行政が負担してもらえる場合があります。
地方自治体では、移住者の誘致や地域活性化の目的から、空き家の利活用に力を入れているところもあります。また、防災対策などの一環で、耐震リフォームに補助金を出している自治体もあります。
家屋を解体する場合も、耐震リフォームする場合も、そういった国や自治体の補助制度の活用を考えてみると良いでしょう。
空き家を解体する時期に注意
空き家の建っている敷地は、固定資産税の住宅用地特例により、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。
空き家を解体すると住宅用地とみなされなくなり、土地の固定資産税が一気に跳ね上がります。
買い手が見つかっていないのに早々に解体してしまうと、土地の固定資産税を余計に払うことになりかねません。
解体するなら…
住宅用地であるかどうかは、毎年1月1日時点で判定されるので、空き家を解体するなら、それ以降がベター。
更地で引き渡すことを条件に売りに出し、買い手が見つかってから解体するのがベスト。
専門家に相談してみよう
親が暮らしていた家、自分が子ども時代を過ごした実家を売るのは、忍びないものがありますが、住まなくても維持管理費用はかかります。
放置していたら「特定空き家」に指定され、固定資産税が跳ね上がり、撤去命令が来る場合もあります。
利活用するのが良いのか、売却するのが良いのか
売却するなら、リフォームして売るのが良いのか、更地にして売るのが良いのか
判断が難しい場合が多いと思います。専門家に相談してみると良いでしょう。
相続した空き家の売却で特別控除の特例が適用される条件
相続した空き家の売却で、3,000万円の特別控除の特例が適用されるのは、次の条件をすべて満たす場合です。
特例の適用対象となる家屋
1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋。
⇒ 旧耐震基準で建てられた家屋。
区分所有建築物は除外。
⇒ マンションなどは適用対象外。
相続する前、被相続人(亡くなった人)が1人で住んでいた居住用家屋。
⇒ 相続開始により、空き家になった家屋。
こうした家屋とその敷地を、次のような条件で譲渡した場合に、3,000万円の特別控除の特例が適用できます。
特例の適用対象となる譲渡
相続の時から譲渡の時まで、居住、貸付、事業に使われていない。
耐震改修を行い新耐震基準に適合する建物として売却するか、家屋を取り壊して土地だけ売却する場合。
譲渡期間は、2016年(平成28年)4月1日から2019年(平成31年)12月31日まで。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡したもの。
2013年(平成25年)1月2日以降に相続が発生したものが対象となります。
相続開始が2013年1月2日の場合、3年を経過する日が2016年1月1日となり、その年の12月31日までに売却すれば特例を受けられます。
2013年1月1日以前に相続開始の場合、譲渡期限が2015年12月31日となり、対象となりません。
売却額が1億円を超えないこと。
役所から要件を満たす証明書類を入手し、確定申告書に添付して申告すること。
おもな条件をまとめると…
1981年5月までに建てられた一戸建て住宅
亡くなった人が一人暮らしをしていて空き家になった
相続発生後、住んだり、貸したり、事業に用いたりしていない
相続発生から3年後の年末までに売却
建物を解体するか、新耐震基準を満たすように改修して売却
売却価格が1億円以下
最大609万円の減税
相続した実家を売却するとき、親が所有していた期間は5年を超えている場合がほとんどでしょうから、その場合は「長期譲渡所得」に区分されます。
長期譲渡所得の税率は20.315%ですから、最大で、
3,000万円×20.315%=609万4,500円
も税金を減らすことができます。
具体例で見てみよう
相続により取得した実家を5,000万円で売却し、譲渡費用は300万円だったとします。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
ここで、譲渡収入金額:5,000万円
取得費:5,000万円×5%=250万円(概算法)
譲渡費用:300万円
ですから、譲渡所得は4,450万円となります。
特別控除を受けられる場合
3,000万円の特別控除の適用要件を満たす場合、譲渡所得は
4,450万円-3,000万円=1,450万円
ですから、譲渡所得にかかる税金は、1,450万円×20.315%=294万5,675円
特別控除を受けられない場合
一方、特別控除の特例を受けられない場合の譲渡所得にかかる税金は、
4,450万円×20.315%=904万175円となります。
このように、3,000万円の特別控除の特例を受けられると、609万4,500円税金が安くなります。