空き家問題について考える

2015年10月26日に、不動産業界で話題となっている出来事があったのをご存知でしょうか?横須賀市にある古い一戸建が、横須賀市の行政代執行により、全国で初めて取り壊されたという事件があったのです。

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空き家の増加が問題となっている。総住宅数に占める空き家の割合は平成20 年時点で13.1%に上るそうです。全国にある一戸建てのうち13%が空き家になったということです。これってすごいですよね。

人口減少局面に入った日本では、今後もより一層空き家問題が起こると考えられます。

平成27年2月26日に空き家対策特別措置法として、一部条文の施行が留保されていましたが、同年5月26日から完全施行されました。

ところで、空き家対策特別措置法どんな法律かご存知ですか?

どのような影響があるのでしょうか?

空き家による悪影響の懸念

最近のニュースで、古いビルの看板が落下し、実際に大ケガに繋がった事件も起こったように、建物は必ず朽ちていきます。
他にも外壁が歩道に落ちて、危うく通行人が被害に遭いそうなケースもありました。

個人の戸建てで考えると、誰も使わないおうちがあったとします。

空き家ですから、何らかの方法で家の中に入って、そこが悪の温床になることも考えられますし火事で近隣に

迷惑をかける可能性があります

当然、人口が減少していきますので、空き家はどんどん増えていくわけです。

では、なぜ誰も住まない悪の温床になるかもしれないような建物を壊さないのでしょうか?

更地して駐車場にでもすれば何も問題ないと考えられます。

しかし・・

建物があると固定資産税が優遇

建物がある土地は、土地の固定資産税が最大で1/6まで優遇される特例があります。
逆に考えると、解体するだけで土地の固定資産税が最大6倍に増えるのですから、空き家が古くなっても誰も解体しようとしません。

さらに解体費の問題もあります。空き家を解体したからといって、すぐに土地が活用できるはずもなく、解体するとすれば建て替えか、土地を売買・貸借するタイミングが普通です。
費用をかけてまで解体しないのと、固定資産税の関係もあって空き家が減りません。

 

そうこうしているうちに、今にも崩れそうな建物が世の中に増えてしまったのです

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ところが今まで戸建てがどれだけボロボロになろうと、個人の所有している建物は財産権があり県や市が

壊すことができず、いろいろな地方で問題になっていたのです!!

そこで、特別措置法を制定して、市町村の空き家対策に法的根拠を与えたのです。

空き家対策特別措置法では、
また、空き家の放置を抑制する効果(後述する税制上の措置)が見込まれています。

条文で明記された空き家対策特別措置法の目的 は次の通りです。

  • 地域住民の生命、身体又は財産を保護する
  • (地域住民の)生活環境の保全を図る
  • 空家等の活用を促進する
  • 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進する
  • 公共の福祉の増進と地域の振興に寄与する

これらの目的を達成するため、国が基本方針を策定し、市町村が空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めるとされました。

要は近隣住民に迷惑をかけるような古い家があった場合は、法律に照らして、県や市が必要と考えたときは、

法的手順を踏んだうえで行政代執行という形で、壊すことができるようにした今回横須賀が最初の事例なのです。

これは間違いなく今後増えていくでしょう。

解体費は誰が持つかという問題がありますが 所有者が負担できなくても、市町村が負担してその費用を所有者に請求することになっていますが、実際はほとんど回収できないと考えられ、これは解決できない今後の問題でしょうが仕方ないですね。公共の福祉のためなのでしょう。

 

ここからが重要で、先ほど書いた固定資産税の1/6の特例が、特定空家等に対する市町村の改善勧告があると、土地に対する固定資産税の特例(優遇措置)から除外され、土地の固定資産税が最大で6倍にも増額されます。

ようは、地方に家を持っていて、様々な理由で放置していた不動産も今後は何らかの措置をしなければいけなくなるということです。

全ての空き家が対策の対象ではないですが、売買や賃貸を目的として、空き家や解体後の土地が、不動産市場に流れると十分に予想できます。

その反面、空き家物件が不動産市場に増えても、不動産の買い手が増えるわけではなく、市場原理を考えると、供給が過剰になって価格が下がるとも言われています。需給バランスが崩れる可能性はあります。

空き家の所有者にとって、売却価格や賃貸価格の低下はマイナスでしかなく、しかも人の少ない地域で同時期に流通すれば、周辺相場への影響は大きいでしょう。
そうなると、空き家ではない所有者も、間接的に資産価値が下がる影響を受けます。

地域によって対象になる空き家の数は違うとはいえ、対策前に先手を打って売り抜けるつもりでいないと、価格が下がって売るに売れないかもしれません。

また、特別措置法は全ての空き家を措置の対象にしておらず、次のように周辺への影響が大きい空き家を「特定空家等」と定義しています。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

要はぼろぼろになるまでほっといたらダメということですね

賃貸や売却も視野に入れて総合的な判断を

まだ使える家が残っているなら、賃貸することで借主が管理してくれますし、価格が下がる前に売却してしまうのも手です。
管理代行サービスは、一時的な引き延ばしにしかならないので、将来も見据えて空き家をどうするか考えるのは、所有者に突き付けられた課題です。

田舎では売主がなかなか見つからない点から、利益を出すつもりで売却を考えないこと、賃貸でも維持費をカバーできる程度の家賃で十分でしょう。
いずれにしても、現状を放置して事態が改善することだけはありません。

家には思い出が残っているので、なかなか思い切れませんが、残しておいても税負担が増える上に、強制対処となっては結局自己負担です。
早く手放すことで、周辺の同じような空き家との競合を避けられるメリットもあります。

また、解体して更地にしてしまえば空き家ではないのですから、所有者の管理責任は段違いに軽減され、同時に行政指導の対象から外れます。
特定空き家に該当すると思われる場合は、面倒なことになる前に、とりあえず補助を受けて解体しておくのも有効です。

 

まとめ

空き家対策特別措置法について、ご説明してきました。
誤解なきよう、空き家対策特別措置法=強制撤去ではないんです。

市としては、お金がかかるし回収する見込みのない家を壊したくはありませんが、ボロボロになったりゴミ屋敷になって近隣の住民から

「あの家を壊してくれ」という要望が出てしまい社会通念上こわさざるを得ないと判断されたときに法律に沿って

壊されるわけです。

それによってどのような影響が出るか?

賃貸物件として貸すことができないエリアの不動産は、今までのような塩漬けは許されなくなり壊すのも、維持するのもお金がかかるようになります。

それによって売り物件が市場に放出され、需給バランスが崩れ、値段が下がることが予想されるわけです。

要は使っていない建物は放置するのではなく、取り返しがつかなくなる前に売却したほうがいいということになるのです。