縦の共有と横の共有(相続)

 ある方の紹介でスタートしました。

お父様が亡くなったので遺産分割協議をしたいとのことで、お母様と姉妹で遺産分割協議書の作成を行いました。

 

一つ困ったことがありました。今から50年前、お父様が自宅を買うときに、お父様がお母様に20%、お姉さまに15%、妹様に15%の持ち分を持たせたのです。

当時10才、7才と小さかった姉妹に支払い能力(お金)があったとは考えられません。

なぜ当時10才、7才の姉妹に持ち分をもたせたのでしょうか?

購入した時に、専門家からのアドバイスがあったのでしょうか?お父様がなくなった今としては、確認することもできませんしいまさら言っても仕方がありません。

 

現実としてはお父様、お母様、長女家族がご自宅に住んでおり、次女家族は全く別の県に住んでいるのです。

 

縦の共有という言葉と横の共有という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

不動産を共有で持つ場合に、お父様と息子さんや娘さんなど上の世代と共有することを縦の共有。兄弟姉妹の共有の場合は横の共有という言い方をします。

 

我々相続を相談を乗るものとして、不動産の共有をお勧めしていません。

ただしあえて言うとすると縦の共有はOKだが、横の共有はNGというのが常識です。

例外としては、これからその不動産を横の共有者兄弟姉妹で売却することが決まっている場合などは、共有でも大丈夫です。今回の場合は長女家族とお母様がこの家に住み続けることが決まっていました。

 

なぜ縦の共有がOKで、横の共有がNGなのでしょうか?

縦の共有がOKな理由は、お父様が亡くなった時に、息子さんの持ち分を渡すことで共有を避けることができるからです。また親子ですのでその不動産をどうするか?の意思決定が統一されやすいという傾向があります。

 

横の共有がNGな理由は、万が一兄弟姉妹がなくなると、その持ち分はさらに奥様や子供に相続され、共有が進んでしまうからです。今まで2人が共有だったのが、相続が発生するごとに3人・4人と増えていくわけです。

 

昭和2252日までは家督相続制度だったので、令和元年の今から考えると72年前までは、両親が亡くなった場合はすべての財産を長男が相続するという制度でした。

72年前までは相続争いという言葉自体なかったのです。長男が相続するのが当たり前。

次男3男は小作人と同様に扱われ、長男が持つ土地に家を建ててもらい住むということもあったようですし、家にいてもしょうがないので軍隊に入ったり養子に出されたりという状況の様でした。ひどい世の中のようにも見えますが、相続という観点から見ると相続争いがないという面はあったと思います。

 

私はまだないのですが、昭和22年より以前に亡くなった方の相続登記をするということもあるようで、その際は家督相続になりますので注意が必要と習っていました。

 

逆に言うと昭和22年以降は、現在の相続制度を使いますので、よく聞くのがひいおじいちゃんが亡くなった時に、兄弟の一人が遺産分割協議に反対し、ひいおじいちゃんの不動産相続登記が未了のまま何十年間放置されている土地というのが現実にあります。

戦後は子供が多い時代がありました、おじいちゃんの子供が仮に6人いたとして、

それぞれが子供が4人ずついて、その子供が3人ずつ兄弟がいたとすると。相続人は何人いるんでしょうか?

 

私の知っている行政書士さんが相続人が50人以上いたそうです。

50人以上いるの相続人を調査するだけで、結構なお金がかかります。

その相続人が生きているのか死んでいるのか?50人もいれば海外に住んでいる人もいるでしょうし、行方不明になっていたり、認知症になっているかもしれませんし、相続登記を反対する人もいるでしょうお金を請求する人もいるかもしれません。

 

それらすべての問題が解決しなければ、遺産分割協議は完成しません。

50人も相続人がいたら数百万は遺産分割協議を結ぶのにお金がかかるでしょうし、

数百万を払っても遺産分割協議を結べる保証は絶対にありません。

こんな土地を所有者不明土地といいます。

相続登記には期限がありません。

 

つい最近まで所有者不明土地は九州くらいの大きさがあるといわれていましたが、最近は北海道と同じくらいあるといわれています。小さくなることはありませんのでそのうち本州と同じくらいとなるのかもしれません。

 

つまり、横の共有というのは、そういう「所有者不明土地」を生み出してしまう可能性が高い土地にしてしまうということです

 

わたしは、相続の相談を受けるときにこの横の共有をなくすことをいつも一生懸命考えます。

 

かなり、話はそれてしまいましたが、

 

私が今回行った方法としては

 

お父さんの持っている不動産については長女へ相続させる。お父様はほとんど現金がありませんでしたので、長女から次女へ代償金を払ってもらいました。長女の方は、ちょうど会社を退職し退職金を貰ったところでした。

 

そして次女が持つ15%の持ち分を、長女へ移行する為に110万円以内の贈与契約を結び、それ以外の部分については不動産売買契約を結びました。

すべてを贈与契約にするという案もご提案しましたが、長女が次女にお金を渡したいという意向を受け、そのような形にしました。

 

最後にお母様の遺言書作成のお手伝いをしました。

お母様の所有する持ち分はすべて長女に相続させるという遺言書です。

この3段階をへて、この土地の持ち分100%が長女のものになるのです。

 

亡くなったお父様が、理由はわからないですが、不動産を購入した時に、横の共有という良くない状況を作ってしまいましたが、それを解消するのに、専門家の手間やお金がかかってしまいました。簡単に書きましたが、このスキームにはかなりの専門的な知識が必要です。

不動産の価格や相続財産、家族構成・家族状況などによって全くやり方が変わってきます。

横の共有の解消は、できるときに、できるだけ早く、これが基本だと思います。

お心当たりのある方はぜひご相談いただければと思います。